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愛華 一章5

 
翌朝、なぜか胸騒ぎを感じてユリアーノは目を覚ました。“将軍”が今日現れるからかもしれない。最初はそう思っていた。
違和感を感じたのは、昨日とは違う少女が食事を運んできたときだった。イェンヴェルス軍に捕らえられてから、食事の世話は昨日の少女がやっていたはずだった。
「ヨルラの少女はどうしたの」
その少女はびくりと体を震わせて、ユリアーノから目を逸らした。指先が細かく震えている。
「何があったの」
ただならぬ事態があの少女を襲ったのだと感じ、ユリアーノはそばで控えていた兵士を睨みつけた。
「教えられない」
「あの子はどこ」
「あんた相手をしてくれるなら、教えてやってもいいが」
にやりと彼が下品な笑いを浮かべた瞬間、ユリアーノは全てを悟った。
「……本当に教えてくれる?」
胸の内に湧き上がる怒りを押し殺し、静かに男に近寄る。男は目を見開いたが、ユリアーノの肢体を視線でなぞり、ごくりと喉を鳴らした。
やわらかそうな瑞々しい肌、華奢だが女らしい丸みを失わない肢体は、男から本能以外のものを容易に剥ぎ取っていった。
ユリアーノは冷め切った眼差しで、目の色を変える男を見据える。自身の容姿と肉体が男たちを豹変させることを彼女はよく知っていた。
男の唇に指を当てる。そっと鼻先が当たりそうなほどに顔を寄せ、囁いた。
「あの子はどこ」
男が唇を寄せてくるのを、両手で押しとどめる。
「教えてからよ」
「もういない」
「え……」
あっけにとられる。その瞬間を狙われたが、かろうじて男の腕から逃れた。
「どういうこと」
「あの奴隷は死んだよ」
じりじりと距離を詰めながら男はおかしそうに言った。
「死んだ……?」
「あんたも馬鹿だなぁ。男が本気になればどうなるのか、わかっちゃいない」
男はユリアーノの首の高さまで手を上げ、絞めるふりをした。
「女をねじ伏せることなんか簡単さ」
首筋から一気に血の気が引いていった。あの少女が殺された……?
男に力づくで押さえつけられ、体を蹂躙(じゅうりん)された上に首を絞められる少女の姿が思い浮かぶ。
背後から、食事を運んできた少女が嗚咽を漏らす声が聞こえた。

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