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レイピア序章2

違和感は突然の激痛に変わった。
「……ッ!」
声にならない呻きをもらして、少年はその場に倒れ込んだ。胃が焼けるように熱い。強烈な吐き気に襲われたが、うまく吐き出すことができない。
雪に埋もれたままお腹を抱え、苦しい声を漏らすことしかできなかった。
「お…母さま……」
少年は母の面影を求めて、視線をさまよわせる。
(お母さま……)
すぐそばで、雪を踏みしめる音がした。雪でまだらになった黒い靴が目の前に現れる。
(……だれ?)
視線を登らせていく。男の目が少年をじっと見下ろしていた。少年の息は一瞬止まった。
そのとき、そう遠くない場所から少年の名を呼ぶ声がした。男ははっとその方角へ顔を向けると、雪を散らしながら庭園のさらに奥へと逃げていった。
少年はそれを呆然と見送った。聞き慣れた初老の男の声が近づいてくる。それなのに、心臓はせわしなく鳴り続け、体も震え続けた。
あの目。少年をじっと見下ろしていた眼差し。
まるで少年を射殺さんばかりに鋭かった。明らかな殺意を持った刃だった。
怖かった。殺されるかと思った。なぜあんな殺意を向けられなければならなかったのか、まだ幼い少年にわかるはずもない。ただ一生拭えることのない根強い恐怖を植え付けられたのは確かだった。
初老の男が少年の姿を見つけ、駆け寄ってくる。抱き起こされ、男が他に助けを求める声を、少年はどこか別の世界で聞いていた。

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